陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
幸姫は木格子から手を離して後退った。


…今、信長っつったよね…?


信長の鋭い眼光から目が離せない。


信長って、あの、信長、よね?


自分の知っている、授業で習った信長の姿はどこにもない。
いるのは、健康的に焼けた、髭がとてもよく似合うダンディーなおじ様だけ。

「魔王…?」

教科書の肖像画からはむすびつかなかったが、今目の前にいる人物ならば、その表現はしっくりとくる。

信長と呼ばれた男は、小さく笑った。

「名は幸姫、だったか?」

言われて体が硬直する。


な…なんで知ってんのさ!?


嫌な汗が一気に背中に吹き出した。
ごくりと唾を飲み込む。

その様子を見て、信長はまた、小さく笑った。


「家康、この娘を連れてこい」

「はっ」


そういうと、信長は踵を返してすたすたといなくなった。

そして。

「出ろ」

家康は牢の南京錠をはずすと、幸姫にむかって、短く命令した。



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