陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「おかしいな。その娘の名は幸姫という名ではなかったか?」

信長の表情が一気に冷たくなる。

「いや。こいつの名はさち、だ。こちらへ一緒に兄と来ていたはずだったが、どうやらはぐれたようでな。さち、成実が心配していたぞ」

政宗が言う。
が、こちらを見ることなく、信長とにらみ合った状態のままだ。

「なぜ、この場に居るのかはあえてきかないでおこう。まさか、天下の信長様が、よもや人攫いのような悪党のような真似をするはずはないだろうからな」

そう言うと、政宗は幸姫の手を引き、茶室を出ようとした。

「悪いが今日の茶会はこれでお開きだ。一体、どういうつもりか知らねぇが、これ以上ふざけた真似しやがったら、奥州は黙ってねぇからな」

そう言った時だった。政宗の動きがぴたりと止まる。よく見ると、信長がすっと首元に刃を当ててきていた。

「それはこちらの台詞というものだ、奥州の若いの。茶の席でそのような無礼がまかり通ると思っているのか?」

その時だった。

「ふざけんじゃないわよ」


もうだめ、我慢の限界。


政宗の腰に差してあった刀を抜き取り、信長ののど仏に切っ先をぴったりと突きつけている。

「先に無礼なことしてきたのはそっちでしょうが」

ふぅふぅとまるで威嚇する猫のように目を鋭く光らせる。

「それに、政宗におかしな真似したら、ただじゃおかない」




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