陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「これだから無駄に広い家なんて嫌いなんだ!」

自分がどの部屋にいたのか、どこをどう通ってきたのか。
すっかり綺麗さっぱり忘れてしまっていた幸姫は、しっかりと屋敷の中で迷子になっていた。

「うぅ…こんな所であのおっさんに会ったりなんかしたぶ」

どん、と誰かにぶつかり、幸姫は一瞬バランスを崩す。

「ご、ごめんなさ…げ」

慌てて謝ろうとして、ぶつかった人物を見て思わず顔が引きつった。
が、何故か目の前の人物も頬をひくひくさせていた。

「おい、どうした小十郎」

後ろから聞いたことのない声がした。
と同時に、小十郎の体がびくっと震えた。

「何でもございません」

言うと同時に、目にもとまらぬ速さで襖をすっと必要最低限の大きさ開けたかと思うと、幸姫をドン!と部屋に押し込み、パタンと襖をまた閉じた。

「いったー……」

いきなりの出来事で、びっくりする幸姫。
思わずどすんとしりもちをつく。


文句のひとつも言ってやらないと気がすまない!


幸姫は眉間に皺を寄せて、襖の方へと近寄った。



が。



な、なに!?なんか怖い!!


殺気にも似たようなオーラが、襖の向こうから漂ってくる。



…今行ったら、絶対に殺られる。


幸姫はごくりと唾を飲み込み、その場でたたずんでいた。

< 30 / 524 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop