陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「おいしー!」

ガツガツとご飯をかきこみながら、幸姫は幸せそうに叫んだ。

「あはは、大げさだねぇ」

幸姫の食べっぷりに、苦笑しながらおはるが言った。

「喜多様が、あの部屋にあんたが居るって言ってたから迎えにいったけど…本当に驚いたよ」

言われて今度は幸姫が苦笑いを浮かべた。

「すいません。あの部屋から出るなって言われてたもので…でもちょっと1人であの暗闇の中に居るのは怖かったんですよね」

幸姫の言葉に隣でご飯を食べていたおあきが笑った。

「おはるさんのあの表情。本当に可笑しかったよ」

お茶をすすりながらケラケラと笑うおあきに、おはるは少し頬を膨らませながら拗ねる。

「仕方が無いだろう?襖をあけたら部屋の隅っこで泣きそうな顔でこっちを見てる子がいたんだ。そりゃぁ誰だって驚くよ」

ふん、と鼻を鳴らすと、おはるは残っていた味噌汁を一気に飲み干した。

「そういえば、あんた名前は?」

かちゃっとお箸を置いて聞いてくる。

「あぁ、そう言えば聞いてなかったね」

「本当だ。昔からいた子みたいに馴染んでたもんだから、聞いてない事に気づいてなかったよ」

笑いながらいう二人に、幸姫はごくんと漬物と麦を飲み込むと、笑って答えた。

「幸姫です。幸せの姫って書いて、幸姫」

その時、台所の襖が開いた。

「…こい」

まるで仁王像のように腕を組んで立っている小十郎にぎろりと睨まれて、幸姫は顔を少し引きつらせながら頷いた。

バタバタと食器を片付けて、幸姫は小十郎の後を追った。


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