陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
さっきとは違う部屋で、布団の敷いてある部屋だった。

「あの…」

幸姫が口を開いた所で、小十郎は立ち止まり、幸姫の方を向いた。

「名を聞いていなかったな」

言われて、幸姫は、あぁ、と答えた。

「幸姫です。青柳幸姫」

幸姫が答えると、少し考えた後、小十郎は大きく溜息をついた。

「今夜は政宗様もここに泊まる事になった」

苦虫を噛み潰したような顔で小十郎が呟く。

「もう夜も更ける。今から帰れという訳にもいかん…とにかく、今日はここに泊まるといい」

小十郎の言葉に、幸姫は目を丸くした。

「い、いいんですか?」

小十郎は小さく溜息をついて頷いた。

「ただし、この部屋から一歩も出るんじゃねーぞ。わかったな?」

「は、はい」

こくこくと幸姫が頷くのを確認すると、小十郎はそのまま部屋を出て行った。

「こ…怖い!」

そう叫ぶと、ぼろぼろと涙をこぼしながら幸姫はその場にへなへなと座り込んだ。


なんで?なんで?なんで!?
私、あのおっさんにあんなに怒られるような事、なんもしてないよねぇ!?


ぶるぶると肩を震わせながら、小十郎の出て行った方を見やる。

「…っく!小十郎の馬鹿ー!怖いのよー!」

きぃ!と怒りながら、幸姫は布団の上に置かれていた浴衣に着替えた。



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