陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「…幸姫殿に話がございます。少し、お借りしても?」

「え?私?」

突然、自分の名前を呼ばれて驚く幸姫に、喜多はどうぞ?とニッコリと笑った。
幸姫も、この異様な雰囲気から脱出できるのであれば、と小さく頷き、小十郎の元へとそそくさと近寄った。

「では」

「え?あ、おい、ちょ…待てよ!」

「政宗様、話はまだ終わってはおりませんよ?」

政宗が小十郎に助けを求めるが、喜多がパシンと扇子を鳴らし政宗に微笑みかけた。
小十郎は小さく、申し訳ございません、と呟くと、パタンと襖を閉めた。

「こじゅーろー!テメー!おぼえてろよー!」

少しだけ、本当に置いてきてよかったんだろうかとも思ったが、幸姫も襖越しに、政宗に向かって手を合わせて拝んでおいた。

「ところで、話ってなんですか?」

幸姫が聞くと、小十郎はいや、と小さく呟き、幸姫の手をガシッと掴んだ。

「いった!」

丁度傷口の部分を押さえるようにして掴まれたせいか、びりっと電気が走ったような感覚が幸姫を襲う。

「すまん。それより、一体、どうしたというのだ、この傷は」

小十郎に聞かれて、幸姫はあはは、と苦笑いを浮かべた。

「あの、実は・・・」

素直に事の成り行きを説明した。
もう一度、姉滝に行ったこと、そこで山賊にあったこと。何とか逃げ延びる事が出来た事。

「ふむ…それで、大きな怪我はないのだな?」

小十郎にぺたぺたと身体を触られて、幸姫は少し顔を赤らめながら頷いた。


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