陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「あの…その、勝手に出歩いたりしてごめんなさい」

幸姫が謝ると、小十郎はいや、と首を横に振った。

「気にするな。それで?母上とは会えたのか?」

小十郎の一言に、幸姫はうっと詰まった。


どうしよう…会えてない。
っていうか、たぶん、ムリっぽいんだよね。


自分の今おかれている状況を考えると、どうしても母親と再会する事は難しいとしか思えなかった。

困ったような表情で俯いていると、小十郎が、ならば、と提案をしてきた。

「一度、家に戻ってみてはどうだ?母上も戻っているやも知れぬ」

小十郎の提案に、幸姫はますます困ったような表情を浮かべた。

「戻りたいのはやまやまなんですけど…その…」

戻り方が分からない。
現代へ戻る方法が。

「どうやったらいいのか…えっと…」

もう二度と母親に会えないかも知れない。
友達にも会えないかも知れない。

そう思うと、今までになかった感情が、どんどん幸姫の中に溢れてきた。


怖い。
どうしよう。
このままもとの世界に戻れなかったら…?
一生、お母さんに会えなかったら…

いやだ。
ひとりはいや。
ひとりぼっちはもう、いや。




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