陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「政宗様」

小十郎が声を掛けて襖を開けると、うぅ、と少し苦しそうに唸っている幸姫の姿が目に入った。頭を政宗の膝にのせ、横たわった状態で、さらに政宗のものと思われる羽織が体にかかっていた。
その様子に、小十郎の眉がピクリと動く。

「これは一体、どういうことですか?」

状況が把握できずに、政宗に聞くと、政宗は苦笑しながら答えた。

「なに、幸姫が酒を飲んだ事がないと言うからな。飲ませてみたんだが…どうも合わなかったらしい」

幸姫の頭を優しく撫でながら、ちらりと唸っている幸姫を見る。

「それに、こいつを一気飲みしてな…中身は昨日献上された新しい酒だってのに、水と間違えやがって」

笑いながら政宗が答えると湯飲みを手にし少し残っていた酒を飲み干した。
小十郎ははぁ、と大きな溜息をついた。

「政宗様、事情は分かりました。幸姫は別室に」

「いや、いい」

小十郎が言いかけると、政宗はそれを制した。

「何を言っているんです」

政宗の言葉に、小十郎は眉を顰めた。

「政宗様の膝を借りて眠るなど、言語道断です」

きっぱりと言う小十郎に、政宗は真剣な眼差しで答えた。

「俺がいいって言ってんだ。問題あるか?」

強く言われて、小十郎は返す言葉を失った。


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