陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「…政宗様、これはどういうことなのでしょう?」

小十郎の後ろで、食事を持って立っている喜多の姿があった。

あくまでも、顔はニッコリと笑っていたが、声は全く笑っていなかった。

「お戯れが過ぎますわ」

喜多の一言に、政宗はくくっと喉を鳴らした。

「なぁに…時期にこいつは俺のものになるんだ、このくらい許せよ」

政宗の言葉に、喜多の眉がピクリと動く。

「ま、政宗様!?何を」

何を言っているのかと、驚いて小十郎が口を開いた。
が。

「政宗殿」

真剣な表情の喜多が、政宗の名前を呼んだ。その呼び方に、小十郎は開いた口を閉ざし、政宗は真剣な表情になる。

「ご自分のおっしゃっていること、もちろん、お分かりになっているのですよね」

言われて政宗はにいっと笑った。

「俺がそうする、と言っているんだ。問題はあるまい」

政宗の言葉に、喜多はちらりと小十郎を見ると、小さくため息をついた。

また、いつもの悪い癖がでた。

半ば諦めたような顔で、喜多は食事を部屋の隅に置くと、そのまま部屋を出ていこうとした。

「政宗様のお決めになられたことに、異論などございませぬ」

振り替えることはせず、背中越しに政宗に向かって言う。

「ただし、幸姫様はあくまで片倉家の客人でございます。くれぐれもお忘れなきよう」

そう言い残して、喜多は部屋を出ていった。

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