恋の説明書
「はいはーい!」
陽気に電話に出る棗を呆れつつ見送る。
そして足を進める。棗の部屋へと。
何年経っても、忘れることのない部屋。
部屋に近づくにつれ、部屋から漏れる棗の声とおそらくゲームであろう音。
静かにドアノブに手をかける。
一番先に目に入ったには、テレビに映し出された男。
下の方にセリフも映し出されていた。
これが乙女ゲーってやつなんだろうか。
棗は先ほどと同じ服装のままで、ゲームに夢中だった。
気づかれないことが不服に感じる。
「おい」
俺の一言に、棗は俺の存在をやっと気づき目を向ける。
そして、たいして大きくない二重の目を見開く。