恋の説明書
男の正体
「おかーさん!!お腹すいたー」
お腹を擦り、リビングのドアを開ける。
あたしの目に入ってきたのは、先程の憎たらしい男だった。
「なっ、なんであんたがいんのよーっ!!!!!」
我が物顔で味噌汁をすする男。
何でここにいるか知らないけど、夕食まで食べてこうなんて図々しいやつ!
「いちゃ悪いわけ?」
視線は上げずに煮物を箸でつつく男。
「悪いに決まってんでしょ!出てけって行ったでしょ!!」
「…俺は、部屋を出てけっていう意味だと解釈したんだけど?」
「家から出てけっ!!」
「そりゃ無理だな」
すると、男の隣に座ってご飯を食べていたお兄ちゃんが口を挟んだ。
「…なんでよ」
疑問に思いながらも、唇を尖らすあたし。
「そりゃあ、俺の客人だからな。おまえに追い返す権利はねえってわけ」
どうやらコイツはお兄ちゃんの友達らしい。
「つーかさ、おまえまじで覚えてないわけ?昔よく、うちに来てたじゃん。」
「知らないし」
即答するあたしに、お兄ちゃんは苦笑する。
「五十嵐伊織だよ。」