恋の説明書

いがらし…いおり…?

う~ん…と、脳ミソをフル回転させてみる。

脳内に、この男の顔を浮かべる。

「クソガキ」

なんだかムカつく言葉が蘇ってくる。

「ああっ!あんた…」

そういえば、こんなにムカつくことは初めてじゃなかった。

こんな思いを毎日味わっていたのに、なんで忘れてんだあたし…!

「だから、そのうち分かるって言ったろ」

ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべる、五十嵐伊織。

「さっさと、名乗ればいいでしょ」

「さあさ、棗座ってご飯食べなさい」

空いている席が、五十嵐伊織の前の席ってのが不服だけど空腹には勝てないので仕方がない。

五十嵐伊織ってのは、お兄ちゃんの小学校からの友達でしょっちゅうあたしの家へ遊びに来てた。

そして、こいつはあたしを会う度にからかいという名のイジメをしてきたんだ。

「クソガキ」だとか「ブス」だとか言われていた。大嫌いだった。

大学進学とともに、東京上京してから平和な生活を送っていたのに。

「なんで帰って来たのよ」

日曜日の夜に、呑気に夕飯食べてくなんて出張ではないのだろう。


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