恋の説明書
リビングに行くとお兄ちゃんは、既に朝食を食べ終えていてタバコを吸っていた。
「お母さん、あたしコンポタ飲みたーい」
「はいはい」
すると、すぐにコンポタが入ったマグカップが差し出される。
「いただきまーす」
それとともに、チーズトーストにもかぶりつく。
「……ちょっと、お兄ちゃん!あたしご飯食べてるんだからタバコ止めてよ。臭いんだけど!!」
お兄ちゃんは動きをとめることもなく、タバコを吸い続けて
「ふ~~~」
あたしの顔目がけて、煙を吐き出した。
「うわっ!!臭い!最悪なんだけど!!!」
煙が目に染みる…。我が兄ながら、信じられんなこの男。
「わりい、わりぃ、煙を浴びたそうな顔してたからよ」
悪びれた素振りをまったく見せず、ケラケラ笑っている。
「そんな顔するわけないでしょーが!マナー悪すぎ!!」
「おまえにしかしないから安心しろ」
短くなったタバコを灰皿に押し付け、潰す。
「あたしにすんな!!」
「…あんたたち、子供じゃないんだから喧嘩しないの。二人とも、仕事でしょ。急がなくていいの?」
お兄ちゃんのせいで食べてなかったトーストを慌てて食べる。
「そろそろ行くかな。棗、おまえ早食い止めろよ。だからおまえは男出来ないんだよ」
「ふぉれふぁおひーちゃんほへいでほーが(それはお兄ちゃんのせいでしょうが)」
「何言ってるか分かんねーよ」
自分だけ先に家を出たお兄ちゃんを追いかけ、口の中のものを水で流し込み慌てて家を出る。
ふう…。ギリギリ、セーフかな。
水でパンを流し込むなんて、色気もクソもないって言うのかな。
お兄ちゃんの言葉、否定できないな…。