恋の説明書
すると、志保さんは柔らかく笑う。
「恋は素敵なものよ。女の子を綺麗にしてくれて、成長されてくれる手段のひとつだと思う。
だけど、焦ってする必要はないと思う。恋をしたことなくても、恥ずかしいとか思う必要ないもの。遅かれ、早かれ棗ちゃんにも胸が焦がれる程好きな人が現れるわ」
胸が焦がれる程…そんな、素敵な人のいつ出会えるのだろうか。
少しワクワクした。
「五十嵐君なんていいんじゃない?」
「ちょっと!なんで、あいつの名前が出てくるんですか!それに、焦んなくていいって言ったの志保さんじゃないですか!!」
「ふふ、そうだったかしら」
志保さんは悪びれる様子もなく笑った。
この人、楽しんでるなと思った。
「志保さん、仕事しますよ!」
この話を無理やり終わらせ、仕事に取り組む。
午前中は、無駄話に華が咲いてしまったので午後は黙々と仕事をした。
おかげでお腹が空いた。帰りにコンビニでも寄ろうかなあと思っていると、もう終業時間が近づいてた。
自動ドアが開く音がして
「いらっしゃいませ」
と声を出す。
来店したのは、思ってもよらない人で目を丸くした。