恋の説明書
その男は、漆黒の髪を少し遊ばせたような髪型で
目鼻立ちがはっきりとしていて。ぱっと見イケメンというかイケメン確定だろう。
少し高そうな黒のスーツは皺ひとつなくピシッとしていて清潔感がある。
あたしが人生の負け組ならば、この人は完璧勝ち組だろう。
そして、あたしは再確認する。
こんな人、知り合いにいないと。
「乗れよ」
男は、あたしの腕に触れたかと思うと車の方へと引っ張った。
お兄ちゃん以外の男の人に触れられたの久しぶり…じゃなくて!!
「ちょ、ちょっと!!知らない人の車に乗っちゃいけないってお母さんが」
「おまえ、いくつだよ」
鼻で笑った。
ずるずると引きずられ、まだ喚いているあたしをよそに無理矢理車に押し込むこの男。
「い、嫌だ!!助けてー!!!」
そんなあたしの声も虚しく車のドアが閉まった。