あの音をもう1度
驚いた顔のまま楽兄は私の肩を掴んだ。



「あんなに拒絶してたのに…
どうして急に・・・・あ!あいつか?鈴宮がお前をそそのかしたのか?!」



「ち、違うッ!」


私は楽兄の手を振り払った。




「確かに涼太はきっかけになったよ。けど、この気持ちは私自身なの!」



そそのかされたとか、そんな軽い気持ちなんじゃない。


私が…ずっと望んできたこと。




「わがままだってわかってる。けど…!」


「やっぱりそうなね」




えっ・・・



静かに見ていたお母さんが口を開いた。



「ずっとわかってたよ。奏がピアノを弾きたがっていたこと。
これでも母親ですもの」


フフッと笑う。


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