あの音をもう1度
その言葉に少し恥ずかしくなる。
けど・・・お母さんの表情は春が訪れたように穏やかだった。
「・・・・いえ。俺は、そんな善人ではありませんよ。俺は…最初奏の気持ちをくみ取らず自分の望みのために近づいたんです。
お礼を言うのは俺のほうです。奏を…もう1度ピアノを弾ける環境にしていてくれて」
涼太も似たような雰囲気になる。
高校生の言うような言葉じゃないから、少し笑ってしまった。
「あ。何、笑ってんだよ。奏」
涼太がジトーと私を見る。
「ん~?なんにもない!」
私は幸せだね。
こんなに、いろんな人に思われて。
コンクールまで数か月。
私、頑張るから--