あの音をもう1度
黒く光るグランドピアノ。
ライトが当たっているせいか、余計に眩しく感じる。
そして座り、鍵盤を見つめて深呼吸をした。
“大丈夫”
どうしてだろう?
私がいくらそう思って不安だらけだったのに涼太のあの1言ですっかり心は軽くなった。
やっぱり涼太は不思議だな。
そう思うと少し顔が緩んだ。
そっと鍵盤の上に手を置き、私は弾き始めた。
「♪――♪-♪――」
…胸がドキドキしている。
でも、それは緊張からじゃない。
体が…しっかり覚えているの。