あの音をもう1度
***
そして何事もなく平和に1日が終わった。
「ねぇ、涼太。話って?」
帰り道、私は話を切り出した。
「あぁ…」
ん?どうしたんだろ?
なんとも歯切れの悪い涼太。
いつもなら、スパッと言うのに…
それに心なしか不機嫌。
「…あの後、コンクールが終わった後に調べてみたんだよ。
あの男について」
えっ?
「どこかで見たことがある気がしてさ。調べてみてわかったんだ」
涼太は1枚の紙を差し出した。
「・・・天才、ヴァイオリンニスト。
バルトニア・多喜(タキ)ぃぃ?」
なによ。
このふざけた名前の人…