あの音をもう1度
「それで?なんか暗い顔してたけど、どうした?」
そんな私をスルーして、ほほ笑む涼太。
栞も私の言葉を待っている。
「はぁ~・・・ったく」
マイペースだなぁ、と思いながら軽くため息をついた。
「…帰って来たの」
「「誰が?」」
「…お父さんが」
――それは突然やってきた。
*****
「どしてここにいるの--?
お父さん」
いきなり現れた父に私はかなり驚いてしまった。
私の父、音梨 正範(マサノリ)。
世界でも有名な指揮者である。