赤い糸は意外な所に・・・
・・・許婚・・・。」

「え・・・。」

「正確には、元許婚だけどな・・・・。」

「え、ちょ・・・っていうことは貴方は・・・女子・・・ですか・・・?」

「ああ。」

「じゃ、どうして・・・いや、何故元許婚・・・?」

「私は貧しかったが旗本の娘でね・・・朝弥達の父と私の父は親友だった。それで物心つくころには同い年の雷次が許婚だと何度も聞かされ、私も大人になったら雷次と婚礼を挙げるつもりだった・・・しかし・・・」

「・・・しかし?」

「三年半ほど前・・・ある大店の主人が私を後妻に欲しいと言ってきた。」

「え・・・大店って町人じゃ・・・。」

「ああ。だが、その主人は名字帯刀御免の名家の主人でしかも、私が後妻になってくれたら実家の援助をすると・・・そのころには父も亡くなっていて家には二人の弟妹と二人の母である私の継母がいて、継母は勝手に二つ返事で承諾した。」

「そんな・・・どうして・・・?」

「継母は私と十ほどしか違わなくて私や私の姉たちの母が女しか子を残さないまま大分前に逝ってしまっていたから・・・それに家計が苦しかったことも理由にある。・・・兎も角、私は不本意だったがその大店に嫁ぐことになってしまった。その主人は亡くなった父より五つほど年上で、私と一つ違いの一人息子がいた。」

「・・・つらくはなかったですか?」

「とても・・・つらかったさ。でも最初は主人も優しくしてくれたし、約束どうり家への援助もしてくれた。・・・でもそれから半年にもならないうちに・・・。」

「何か・・・あったんですか・・・?」

「ああ・・・。」
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