飴色蝶 *Ⅰ*
庵は、目を逸らすことなく
会長を見つめた。
   
その目は、組を抜けると言った
あの時の一夜の目と同じだった

「俺の心は、もう
 後戻りはできない
 シュリをあなたから奪わせて
 もらう
 
 その為なら
 どんな制裁でも受ける・・」

「お前は、何も分かっていない
 女の一人や二人
 お前にくれてやる事ぐらい
 俺にとっては大した事じゃない
 制裁もエンコヅメも意味が無い 
 
 シュリは、お前のところへは
 行かない
 
 お前が、どんなに望んでもな
 アイツは、そういう女だ
 掴んだと思えばこの手を擦り
 抜けてヒラヒラと飛んで行く
 今までも
 そうだったように」

会長の家を出て、一人車を運転
する庵の耳に彼の言葉が残る。
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