飴色蝶 *Ⅰ*

キスの意味

庵の雨に濡れた髪に

そっと、手を触れた。

「冷たい髪」

私は鞄からハンカチを取り出し
庵の髪を拭いてあげた。

「こんなに濡れて風邪引くわ」

「すぐに乾くさ」

庵の手が、私の手に触れる。

落ち着いた庵の隣に私は
腰をかけ、何も話さないまま
時間は過ぎていく。
  
しばらくすると

庵は、数日前に亡くなった

妹の事を話し出した。
  
私は、ただ黙って

その話に耳を傾けていた。

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