飴色蝶 *Ⅰ*
私は、薄っすらと

赤くなっている庵の瞳を
  
見つめて伝えた。
 
「情けなくないよ
 無理に強がる必要ないと思う
 
 大切な人を亡くしたんだもの
 その人との思い出の分だけ
 涙は出てくるもの
 
 あなたが居なくて寂しい
 悲しい、悔しいって
 泣いていいと思う」

繋いだ手を庵は強く握り締めた

「すみれ
 聞いてくれてありがとう
 
 でも、親父から俺の事を
 聞いたって話
 いつ、親父に逢ったんだ」

庵の瞳が、鋭く尖る。
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