飴色蝶 *Ⅰ*
「すみれ、俺と約束してくれ
 もう絶対に親父の誘いには
 乗らないと」 

真剣な表情で話す庵を
私は、ほんの少し怖いと
思ってしまう。
  
「はい、ごめんなさい」

他人行儀に謝る私の髪に
庵はそっと触れて撫でてくれた

そして、優しい声で呟く。
   
「馬鹿、心配させんな」
 
私の事を、心配そうに
見つめる庵。
  
繋いだ手を解き私の頬にあてた

私は、動けない・・・

庵の唇が、そっと私の唇に触れ
私は瞼を閉じた。

駅のホームに、電車が入る。

イオリ

どうしてキスなんてするの・・
< 157 / 488 >

この作品をシェア

pagetop