飴色蝶 *Ⅰ*
「兄貴、さっきから電話を
 気にされていますが
 誰かと約束でも」

「いや、今日はもう遅い
 家まで送ってくれ」

後部座席で、窓の外を見つめる
庵は、店の従業員と、手を振り
別れて街を歩く朱莉を見つけた

「カナメ、停めてくれ
 ・・・すぐ戻る」

庵は、車を降りて人込みを
駈けて行く。

「兄貴、勝手な行動は・・・」

朱莉が乗車したタクシーの
閉まるドアに手を挟み
ドアを開けた庵の姿に驚く朱莉

「イオリ、どうしてここに」

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