飴色蝶 *Ⅰ*
初馬の庵への態度は
亡くなった庵の父親に対して
向けられているように
感じられた。

彼の行きつけのお店は
モダンな雰囲気の落ち着いた
静かな空間が織り成す世界が
肌にとても心地よい。

「それにしても
 ため息が出る程に美しい姿
 
 こんな言い方は失礼
 だったかな、すまない」

「いえっ」

「貴方のお父さん 
 イチヤの兄貴には、生前
 大変お世話になりました

 私のような、うだつが
 上がらない男にも
 優しく接してくださって
 子分のミスは全て自分のミス
 だと言ってくださいました
 
 本当の兄貴のように
 俺は、イチヤの兄貴を
 慕っていました
 
 あんなに、かっこいい極道は
 後にも先にもあの人
 ただ一人
 
 彼が極道をやめると言った時
 この私も一緒にやめようと
 そう思ったが自分は極道しか
 できないと分かった私は
 この道に残る事を決めた」
< 196 / 488 >

この作品をシェア

pagetop