飴色蝶 *Ⅰ*
それは、血の痕・・・

いったい誰が撃たれたの?

彼女は震える手を伸ばし
庵を呼んだ。

「イオリ、お願い、傍にいて」
    
庵の肩に、彼女の細く白い腕が
絡まり、彼に、しがみつく。

私は、車に乗ることを躊躇した
 
「すみれ、乗って
 ここから離れた方がいい」

そう言って庵は、私の手を取り
車に、引き入れてくれた。
    
後部座席に庵を挟んで
私と彼女は座る。

窮屈な空間、私は、窓の外を
見つめながら
更紗に心配しないようにと
電話をかけていた。
  
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