飴色蝶 *Ⅰ*
煙草を吸いながら、庵は話す。

「とりあえず今は、勝手な
 行動を取ることを禁じた
 
 親父は、今夜の会議に
 一任すると言っている」

夢中になって、話す男達・・・

庵が、ふと辺りを見渡すと
菫の姿がどこにも無い。

灰皿に煙草を棄て
庵は、慌てて部屋を出た。

「イオリ」

朱莉の声も、庵には届かない。

「兄貴、何処へ・・・
 今、一人になっては危ない
 シバ、後を頼むぞ」
 
要は、庵の後を追いかけた。

夕方の空の下、庵に抱かれた
あの日と同じように
私は一人きり、駅へと急いだ。
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