飴色蝶 *Ⅰ*
その手を、菫は振り払う。

「帰った方がいいよ
 シュリさんのところに
 
 きっと今頃
 貴方の姿が見えなくて・・」

庵を追って来た要は、庵が
菫の手を掴み、自分の方へ
引き寄せて抱きしめるところを
偶然、見てしまう。

庵の腕が
私をきつく抱きしめる。
     
「彼女、不安がって
 泣いてるかもしれないよ」

「お前だって、泣いてる」

彼の胸に抱かれて、私の頬を

涙が伝う。

「シュリさんが大切で
 彼女を愛しているくせに
 
 どうして
 私に優しくするの?」
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