飴色蝶 *Ⅰ*
親子ほどに年の離れた
この世界に、どっぷりと浸って
生きてきた男達が

庵を、羨望の眼差しで見つめる

庵の中に、遠い昔、組を旗揚げ
した頃の一夜の姿が重なる。
 
『親父、ごめんな
 
 俺はもう、引き返せない』

『おまえの愛する女が

 悲しむんだ』

菫の泣いている顔が浮かぶ・・

朱莉が目を覚まし、二人は
ベッドに横たわったままで
会話を交わす。  

「イオリ、おはよう
 
 眠れなかったの?」

「いや・・・」

「イオリ、本当に
 
 高月組の組長になるの?」
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