飴色蝶 *Ⅰ*
立ち尽くす私の隣で

彼が叫んだ。

「高月

 タカツキ イオリだろ?」

庵の足が止まり、振り替えると
その場の空気が一変して
重苦しくなる。

「俺だよ、ミキオ
 覚えてるだろう?
    
 お前が大工辞めて
 棟梁(トウリョウ)
 寂しがってたぞ
 
 筋が良いのに勿体無いって
 お前、今・・・」

庵は、幹生の傍に近寄り

繋いでいる菫の手を奪う。

「ミキオ、俺の女に手出すな
 
 すみれ、お前も早く家に帰れ
 後で、必ず連絡するから
 ・・・・・・」

 そう言って

 庵は、口元を緩めてみせた。
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