飴色蝶 *Ⅰ*
庵がいつ、ここへ来ても
いいように。
  
一日のほとんどを彼の事を思い

暮らす。

「すみれ、当分
 
 逢えそうにない
     
 ごめんな
 また、連絡する」

私はただ、只管

貴方の連絡を待っていた。

庵は今、舎弟を引き連れて
病院を歩く。
   
病室の前、ドアを開く・・・

「あなた、親分さんが」

「三代目、こんな所まで
 足を運んで頂いて 
 すみません」

江崎の妻に要が、お見舞いの花
果物と分厚い封筒を手渡す。
  
「すみません」

頭を下げる江崎の向こう側に
ベッドに眠る、彼の娘がいた。
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