飴色蝶 *Ⅰ*
「やっぱり貴方にとって彼女は
 特別な存在だったのね」

「シュリ、俺と別れてくれ
 俺の心は・・・」

「嫌よ、それだけは嫌」

朱莉の言葉に驚き、困っている
庵の表情を見て、彼女は微笑む
  
「イオリ、嘘だよ
 彼女の事
 大切にしてあげてね
    
 明日、必要な荷物をまとめて
 あの部屋を出るわ」

「朱莉、すまない」

庵は、見つめる朱莉の瞳から
目を逸らした。
  
そんな庵に、彼女はそっと
身を預け、耳元で言う。

「イオリ、私は貴方を
 本気で愛してた
    
 こんな私に付き合ってくれて
 今までありがとう」
   
そして彼から離れ、夜の街を
背筋を伸ばし颯爽と歩いて行く
彼女の後姿を見つめる庵。
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