飴色蝶 *Ⅰ*
庵に泣いている事を知られない
ように
   
彼女は震える体に力を込めた。   

深夜、一台の高級車が道路脇に
停まった。
   
庵は携帯を閉じ、車から降りる
  
「では、明日
 お迎えに上がります
    
 親父、気をつけて」

「ああ」
  
要が車の横に立ち、庵の姿が
見えなくなるまで見送っている
と、一人の女性が駆けて来た。

彼女は、勢いよく庵の胸に
抱きついて、彼を見上げた。

そして、腕を組み甘えた。
  
彼が何かを告げた後、彼女は
振り返り、要に会釈をした。
  
後姿の庵が、要に、右手を
二度振り
  
二人は、角を曲がり歩いて行く
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