飴色蝶 *Ⅰ*
その姿を見た後、要は車に
乗り込み、エンジンをかけて
走り出す。

玄関のドアが、ゆっくりと

閉まって行く中
  
二人は抱きしめ合い

口づけを交わす。

「イオリ・・・逢いたかった」

庵は、その胸に私を強く
抱きしめてくれた。
 
逢いたくて

逢いたくて

堪らなかった人が
  
今、一番近くにいる。

そして、私を見つめて優しく
微笑んでくれる。

「遅くなってごめん」

「ううん、いいの」
 
彼が脱いだジャケットを
受け取ると、以前どこかで
嗅いだ事のある香りがした。

庵は、香水をつけない・・・
  
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