飴色蝶 *Ⅰ*
狭い部屋なのに、二人の間に
距離ができている。

私は、庵に近づきたいという
気持ちでいっぱいだったのに

何故か、彼に近づけないでいた

煙草を吸う、彼の事を

じっと見つめているだけ・・・

「そんなに見るなよ」

そう言って、庵は私を見つめ
微笑した。
 
そして煙草を灰皿へ置いた庵は
私を呼ぶ。

「すみれ、おいで」
  
ドキドキしながら隣に座る
私の肩を、抱いた庵の手が
今度は、私の髪に触れる。

そして彼は

優しく私の唇を奪った。
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