飴色蝶 *Ⅰ*
煙草の味のする苦いキスに
慣れた私は
  
もっと彼のキスが欲しくなる。

庵を近くに感じれば感じる程に
煙草の香りを掻き消すように

甘い匂いが香る・・・

私はキスを交わしながら
ふと気がついた。

この香りは、彼女の香り。

香りは鼻につき、私の神経に
さわり
  
私の心を乱していく。

求めることをやめた私に
気づいた庵は、キスを止めて
私を見つめた。 

「彼女の香りがする」

思ったままを、私は口にする。
  
庵は私の髪に触れようとしたが

私は、彼に触れられる事を
拒んでしまう。
  
そして、彼から離れ

背中を向けた。
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