飴色蝶 *Ⅰ*
「シュリとは、さっき
 別れたから
    
 何も心配しなくていい」

返答の無い私に困り果てた庵は
ただ、謝るしかなかった。

「ごめん
 ごめんな
 ・・・すみれ?」

私は、彼を見上げて言う。    

「馬鹿、先に言ってよ」
  
庵は口元を緩めて、私の涙で
濡れた頬を手で拭ってくれた。

「心配するな」

黙ったまま、頷く私を
庵は優しく包んでくれた。

庵は、私を選んでくれた。

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