飴色蝶 *Ⅰ*
『もう二度と
 彼に会うことは無い
 
 名前も
 思い出せない』

彼は決して、いい人など
ではない。
   
いい人を装って女を
食って逃げて行く。

馬鹿な女が一人

こんなホテル街に
置き去りにされる。

ため息をついて
その場所から離れる
私の向こう側から
歩いてくる人がいる。

その男性の煙草を
銜える横顔は

誰かに似ている。

ううん

似ているんじゃない。

歩いてくる彼は

本物の庵先輩

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