飴色蝶 *Ⅰ*
自転車に全く気がついていない
菫の事を、危ないと思った
庵は叫ぶ。

「すみれ」

庵の声に立ち止まった私は
間一髪で、その自転車と
ぶつからずに済んだものの
   
驚いている私に向かって
自転車の男が文句を言って来た

「チェッ
 ちゃんと前見て歩けよ」

男の言動に怒った庵は
その自転車を足で蹴飛ばし
男ごと自転車を倒し捩じ伏せた

「おまえ、誰に言ってんの?」

自転車の倒れた音に、周囲の
人達が注目する。
 
男性は、庵の形相におじけづき
何も言えない。

「イオリ、もういいよ
 私も悪かったから、行こう」
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