飴色蝶 *Ⅰ*
昔と少しも

変わらない姿に

私の胸は苦しくなる。

庵先輩と目が合った。

彼は、煙草の吸殻を律儀
にも、ポケット灰皿に
棄てた。

何も言わず黙ったまま
私の横を通り過ぎよう
とした先輩の足が止まる
    
そして、一歩戻って
私の、至近距離に
彼は立つ。

そして化粧もしていない
私の頬に手を翳し

彼は言う。

「昔と、少しも
 
 変わってないね
     
 相変わらず

 遊べない女」

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