飴色蝶 *Ⅰ*
私が庵に話しているうちに
自転車の男は、コソコソと
その場から立ち去ろうとした。

「すみれは、何も悪くない
 
 おいっ、お前
 降りて押してけよ」

「はい、すみませんでした」

男は、自転車を押しながら
走って行った。

「イオリ、行こう」
  
さっきと同じように、一人で
先を歩こうとする私の手を
庵は掴み、強く握り締めて
放してくれない。

「イオリ、痛い・・・放して」

「危なっかしい奴
 絶対、放してやらない」

そう言って、庵は微笑んだ後

優しく、手を

繋ぎなおしてくれた。

二人で昼食を取って休んだ後
私達はまた、しっかりと
手を繋いで歩いた。

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