飴色蝶 *Ⅰ*
彼の想い

優しい雨音

雨の中、傘も差さずに
街を徘徊する、私に
誰かが傘を差し出してくれた。

「スミレさん、大丈夫
 こんなに雨に濡れて
 どうしたの?
 
 震えているじゃない」

優しい声は、朱莉さんの声
だった。
  
「私の家、この近くなの
 行きましょう
 
 こんなに濡れて
 風邪引くといけないわ」

彼女の部屋に、案内された私は
驚いている。

こんなに広い部屋を、見たこと
が無い。
  
ううん

余計な物が何も無い部屋だと
言った方がいいのかもしれない

窓の外に広がる賑やかな世界と
この部屋には
大きなずれが生じていた。
   
「ここに座って
 タオル持ってくるわね」
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