飴色蝶 *Ⅰ*
雪乃は、真っ直ぐ私を見つめる

「知らない方がいいって場合も
 あるんだよ
 スミレの気持ちは痛い程に
 分かるよ
 
 誰でも、好きな人の事、全部
 知りたいと思うもの、だけど
 知り過ぎて嫌いになる事
 だってあるでしょう?」

「そうだよね、確かに・・・
 イオリ先輩は、ヤクザだもの
 きっと、私達の知らないよう
 な悪い事もいっぱいしてる
 ・・・ごめん、スミレ」

「ううん、いいの」

雪乃や更紗の言うとおりだと
私は思った。   
 
きっと、庵の全てを知れば
私は、彼の事を偏見の目で
見てしまうかもしれない。

私は四人と別れて、朱莉
さんのお店へと向かっていた。
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