飴色蝶 *Ⅰ*
彼女は、何も悪くない。

彼女は、本当の事を
話しているだけ。

私の胸は、強風に揺れる
木々のように音を立てて
ざわめき出す。
  
「本当は後悔なんてしていない
 私とイオリは、一緒になる
 運命じゃなかったのよ
    
 そうだ、荷物は確か
 これだけだったかな?
    
 鞄は、あの日、カナメさんが
 取りに来たでしょう?」

「はい、すみません」

私は、ある事に囚われて
その後の事をよく覚えていない

彼女から封筒に入ったお給料と
わざわざ洗濯をしてくれた私の
洋服と頂いた洋服の入った袋と

庵に買ってもらった靴を持ち
私は、店の外に出た。

駅へと向かって、夜道を歩く。    
   
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