飴色蝶 *Ⅰ*
誰かが、私の手を掴んで
その胸に抱きしめる。

黒いスーツ、庵?

違う、庵は

香水を付けていない。

見上げた私は、見知らぬ
男性の姿に驚いた。

「貴方は誰なの?」

私は、彼を見つめる・・・

見覚えのある顔立ち。

そう彼は、あの日、風に飛んで
いった、私のショールを掴んで
キャッチしてくれた人。

「やっと、逢えた」

そう言って彼は、見上げた
私の唇にキスをした。

ねぇ、どうしてなの・・・
    
どうして、私は今

見知らぬ男性と

口づけを交わしているんだろう
< 358 / 488 >

この作品をシェア

pagetop