飴色蝶 *Ⅰ*
「すみれ、どうした?
 今、何処にいる」

「何でもないよ、大丈夫
 もうすぐ、家に着くよ」

「そうか」

「イオリ、仕事は大丈夫なの
 何も変わった事は無い?」

「ああ」

「・・・そう
 ごめん
 電車が来たから切るね」

電話を切ろうとしたのと同時に
携帯から庵の声が洩れる。  

「お前、どこにいる?」
   
私は、携帯の電源を落とす。

私の事を思って庵は
何も話さない。
 
いい加減、それが分かれば
いいのに、自分が嫌になるよ。

この胸の、とてつもない
寂しい気持ちを
  
どうすればいい・・・
< 362 / 488 >

この作品をシェア

pagetop