飴色蝶 *Ⅰ*
歩道から車道へ出る為に
停まった車の傍に駆け寄り
近づいた組員は、窓ガラスを
叩き、後部座席のドアノブに
手を触れ開けようと試みたが
ドアは開かない。

「親父、どちらへ?
 親父、一緒に・・・」

庵は前だけを見つめて
車は車道に出て、スピードを
上げて走り去ってしまう。

庵のマンションの前で、若衆が
電話で話をしている。

「カシラ、すみません
 親父の携帯に、何度かけても
 繋がりません
   
 そうですか、分かりました
 このまま、ここで
 待機しています」
  
電話を受けた要は、先代、正二
の家に呼び出されて大切な話を
聞いている最中だった。

和室に、正二と要は二人きり。
 
「どうした、カナメ?

 まさか、イオリに
 何かあったのか?
 
 伊納組の奴らか・・・」
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