飴色蝶 *Ⅰ*
「いえ、違います
 組員に何も告げずに
 三代目、お一人で外出して
 しまったようです」

「あいつは、今、自分が
 置かれている立場を全く
 分かっていない・・・
   
 まさか、そうまでして
 あの子のところへ」

要は、正二を見つめて言う。
 
「多分、そうだと・・・
 俺は、親父がスミレさんの事
 を心から大切に思っている事
 を間近で見て知っています
   
 だから、先代の言う事も重々
 分かってはいるのですが
 とても、俺から親父には
 この事は言えません
   
 先代、すみません」
  
深く頭を下げたまま
要は、顔を上げない。

「カナメ、顔を上げてくれ
 
 お前の事を、イオリは心から
 信頼している
 
 だから、カナメ、お前だけに
 その愛しい女の住んでいる
 場所を教えているのだろう」
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